スケールモデルの再現は感性力が決めてだ!と、つくづく思うのです。

 今日は。  造形村の重田です。
毎日暑い日が続きますがTa 152ファンの皆様にはいかがお過ごしでしょうか。

 今、私の目の前には、SWS-Ta 152の第六番目のテストショットランナーが工場から届いたところです。
  むふふふふ~!自然と頬がほころんできますな~~~。

T-6やっと届きました! しかもパッケージ初公開! 蒼空を切り裂くTa 152の翼がなんともカッコイイ! 見て下さい、この満面の笑み♪ この段階ではまだ笑顔ですが…チェックが始まると鬼の形相に…。

  この試作ランナーのことを私達は略称T-6と呼んでいます。 テストショット六番目という意味ですが、いよいよ開発段階もここまで来ました。

 前回のT-5で気になっていた部分の改修と、改良加工が造形村の指示通りに出来ているかという確認のために、はるばる造形村のスケールチームのメンバーが中国の協力会社から村の本社まで持って帰ってきてくれました。

 T-6のテストショットは数機分もあるのですが、そのほとんどはスケールチームが金型製作の確認や、キットとしての試験製作のため、ばらばらにしてばんばん仮組をしてしまいます。

T-6を最終ショットにするべくひたすら組み立てチェック!チェック!チェ~~~ック! NもTも無心で組みまくります! さすがにここまでくるとパーツ同士の合いやモールドもシャープになってきてます。でもSWSの真髄はそこにあらず!

 企画部の中央にある大机の上に、パーツの全部を並べ、一つずつ全員で確認してゆくのです。 が、これが結構大変な作業なのです。

好きだから。と、言ってしまえばそれまでなんですが、第六番目のテストショットともなるとひと目見たくらいでは、もうその差はほんの少しかありません。 たとえあったとしてもそれは、ほんの少しの差が、見る人によっては、気になるかナラナイか微妙~と言うくらいの差なのです。

 だからここまで、この作業まで来ると、もうやたら神経だけがすり減る神経衰弱合戦みたいな事になります。

当然、私も邪魔にならない程度に参加しては、みんなのお役に立ちたいと踏ん張ります。
踏ん張るくらいに頑張ります。ついでに一言も二言も三言もつい口にしてしまいます。

 楽しいです。嬉しいです。張り合いがありますから。

ついついにやけてしまうのを我慢しながら念入りに最終チェックを行う開発総司令官。頭の中のTa 152と照らし合わせていきます。 う~ん、全体的にはだいぶイメージ通りなんだけど、やっぱりプロペラはもうひと磨きしたいかなあ…とこだわります。

ところが実のところ、悲しいことに、造形や金型の決まり事を無視した私の話など、この段階では何を言っても、もうほとんどそれは評論家程度のレベルにしかなりようがありません。

 だって、ここまでくると、もうそれはほとんど完成商品レベルの内容なのですから、正直文句の付けようがないのです。 それをまあ妙に私が踏ん張るから、話はかえってややこしくなってゆくのです。
すまん!戦友!といいつつ、「これってこうならないの?」てなことをついほざいてはひんしゅくをかっております。 が、これがなかなか楽しいのです。 戸惑う戦友達のそのはにかんだような、先輩を馬鹿にしたような、また困ったような、嬉しいような、怒ったり悲しんだりとにかく、ここまで来てしもうたら、もうどうにもナラナイの! てな話ですから彼等もタイヘン です。 

  すまんのぅ~戦友!! (にやり)

 そうして、私はそのT-6ランナーを抱えて帰宅。例のガンルームで、じっくりとまたそれを見ては楽しもう~。てなもんですから先輩、良いでしょこの立場って。そりやぁ~もう最高ですよ!!

 ところがどっこい、このSWSっていう仕事。 前に進めれば進めるほど、つくづくスケールモデルの再現とは、関わる開発者達の「感性力」の大きさ、強さ、そしてその鋭さこそが決め手なんだと、最近になってますます強く思うようになって参りました。

 実はSWS。 それは企画の段階から私と同様、すでに担当者の頭の中にはもう完成された実機と、そしてそのキットの最終イメージというものがそれぞれにハッキリと形成されている場合が多いのです。

 今までさんざん見てきた写真やイラストからの影響もあるのでしょう。その人なりの思い入れやはたまた好き嫌いなどというのもあるのでしょう、それらが複雑に絡まって、その人だけの実機像や、はたまた架空のプラキットというものがもう出来上がっている場合までが有るのです。 

 そう、実はこれがくせ者なのです。 しかも相当手強いのです。

 写真、図面、実物、戦記、記録、そして以前から発売されてきたさまざまな模型商品などへの思い、それらに対して感じて来た自分自身の確信や、また人の評価などが相まって少しずつそれは作られてきています。 人によってはこれらが実に強固に、正に美術品並みの既成概念として形成されている場合があるのです。しかもそれらがすでに数十年という幾星霜の時間を経て磨き上げられてきたものであればもうタイヘン!!

イメージの上にプラス、更に強固な年期というものが入っているんですもの、少しくらいの新事実が出たとしても、ちょっとやそっとでは揺るがないのが普通です。 むしろそれそのものが自慢です!

 え?それって?  そうです、それは実は自分のことでもあります。私も相当な頑固者なんです。

今回のSWSの開発でも、幼い頃から頑強に形成されてきた私なりのTa 152像が頭の中に厳然と存在していました。 しかもこの上なくかっこ良く!!

ですから、造形村のSWSの開発とは、私を含め、まず開発者一人一人の、その頑強なTa 152像を一旦バラバラに壊してからかからなければならなかったのです。

 実はこれが意外と難しいことに、今は新鮮な驚きすらを感じていますが、勿論スタート当初ではまだそんなところまでは判りません。 SWSが前に進むかどうかは、私の叫ぶ、ただTa 152が欲しい!の絶叫だけが原動力のようなものだったのですから。

 んなわけですからもうただただ、スケールチームの面々は、毎日毎日企画室に集まっては、Ta 152についてのよもやま話を延々と繰り返すところからその企画は滑り出してゆきました。

 歴史背景、作戦、戦場、戦況、前線、戦闘、用兵、用途、機能、構造、エンジン、燃料、要求能力、製造、生産、輸送、配置、訓練、慣熟、戦果、損耗、損害、補給、修理、技量、経験、操縦者、地上整備兵、組織、階級、連携、共同、配置、環境、などなど少ない写真や戦記本を囲んで話は進みます。

図鑑やイラスト集などがあればもう一晩中は語れます!美しいイラストを見ているだけで、もう頭の中には飛行機が飛び交ってます! 皆さん見て下さい、この素敵なイラスト! それがこんなブ厚い図鑑に山盛り収められているんですよ!盛り上がらないわけがない!

 そして、やがてそんな何度かの会合や会議を経て、徐々にSWSとしてのTa 152像がみんなの頭の中に結ばれてゆきました。一人は長大な主翼をピーンと張ったあのTa 152そのものを、一人はエンジンと骨格だけのまるで裸のようなTa 152を、そして一人はリベット跡やモールディングの詳細をまとったまるで実物大で出来たプラモデルのようなTa 152までを。
おっと私など、もうその頃からしきりに急降下を繰り返すTa 152の勇姿を頭の中いっぱいにえがいておりました。 右手を頭のてっぺんから前方へ急降下!です。よろしかったら、さあ!ご一緒に!

いやはや
そのどれもがイラストや図面や地上姿勢の写真を見ただけでは判らない、その人だけのTa 152の姿です。

さあ、それをどうやって1/32スケールで、プラスチックという魔法の素材で出来たTa 152に再現してゆくのか。

 実はここにSWSという飛行機の模型を造形村という、造形専門集団が担当するという大きな意味と理由があったのです。
もともと(株)造形村という会社は、さまざまなホビー工芸商品を自社開発し、全国展開の直営店舗で販売しているボークスという会社の原形作品を専門に制作する目的で設立されました。

 現在会社は、京都市にあって、15名という造形専門の社員が日々その感性と技術に磨きをかけて様々な原形作品を制作しています。

 そしてその中には当然、メカ大好き人間、飛行機大好き人間、中には鉄道マニアやAFVが命などという変わり種メンバーが多数混じっておりました。 ところが、その本体のボークスという会社が開発してきたのはアニメや漫画、映画やゲームの主人公などが多く、最近ではSDというドールの開発にも大きなウエイトが置かれてきました。 なかなか私の夢も、口にするまでは何十年という時間を必要としたのです。

 でもそれが却って幸いしたのですから不思議なものです。

そうです。アニメや漫画に登場する「メカ、ロボット」の造形こそ、それはそれは恐ろしく難しいものなのです。
勿論、図面などは最初からありません。全身の絵が詳細に描かれているなんて言う事もマレ。中には斜め正面から見た小さなイラストを頼りにほとんど造形担当者が自分の頭で創造するしかない場合だって多々あるというのがこの世界の常識なのです。

「メカ、ロボット」の造形では、このようにたった一枚のイラストから、実際には描かれていない背面や細部に至るまでを立体化します。 「え?!本当に?!」ええ、本当です。そのために造形師たちは日々感性を研ぎ澄ませてあらゆる造形に挑み続けるのです!

 そんな状況の中、唯一漫画やアニメの進行をたよりに、原形の制作を進めて行くのです。
だから必死の努力もむなしく、原作者の先生には毎回叱られてばかりです。 原画が情報の全て、という中から複雑な曲線や、見たこともさわったこともない面と面、線と線との繋がりをカッコ良く、最高の形として立体化して行かなければならないのです。

 それに引き替え、ピンボケであろうと何であろうと、写真やイラスト図面という手がかりのある飛行機の造形とは、どれほど判りやすく、またクリーンな、言わば造形の次元というものが全く異なる作業の連続だったのです。

 口で言えばただこれだけのことなのですが、それを実際にやるとなれば、それはそれでまた違う困難がそこにも待ち構えています。 特に軍用機といえば、それはもうタイヘン、それこその時代の最先端でありどれもこれもが国家機密であり、極秘扱いの見本、トップシークレットの権化のようなものですもの、外形はおろか、内部構造を探ろうにも造形どころの話ではないことを想像してみてください。

 ところがどっこい!我が造形村の造形師達は、そんな困難な造形作業そのものが日常だったのですから、もうどこで何が幸いするやら判らないとはこのことです。 
んなことくらい、彼等にかかればぜんぜん大丈夫。今さら怖じ気ずくと言う事がありません。
機能は構造と外形になり、構造が作った外形は必ず解明して造形できる。 という信念のようなもの、いや本能のようなものを彼等は持っているからです。

 時には一枚限りのピンボケ写真から、見事な絵コンテを描き上げ、その絵コンテを元に類似の資料や研究家達の話、その判断を手がかりに、もうこれ以上は考えられないという構造体を探り出してゆきます。

飛行機のように実際に存在するものを立体化するには、その周辺世界も探ることで、おぼろげながらに解決の糸口が見えてきます。 精度の高い開発ラフスケッチを描くためにも、イラストまでも念入りに目を通します。そう、全ては感性力をアップする役に立つのです!

 実は震電の四門の30㎜機銃の搭載構造も、そんな研究開発の努力の結果、ついにこれぞ実機が採用していたであろう形態を解明、キットとして再現することに成功いたしました。

 見えないものを見る。 普通、それは不可能なこと。と片付けられてしまいますが、ご安心ください、飛行機は人が作った物なのです。要求された機能から、許容される構造から、また当時の技術水準の組み合わせから、はたまた類似の機体情報や少ない実機の写真などからかなりの事実までを解明出来るのです。

 SWSこそは、正にそんな仕事を数十年間も鍛え上げてきた造形師達が、その原形師としての感性と、実物実機への限り無い肉迫と研究、そして研ぎ澄まされた緊張感が創りあげた「作品」であると言えます。

 どうか皆さんもSWSの「Ta 152」を手に取られたときは、ぜひじっくりと彼等のその感性力というか、渾身の出来映えをご自身の目で確かめてやってください。

 パーツ状態で、仮組状態で、そして塗装を施しデカールを転写したら、そこにはきっとあなたが今まで見たこともないTa 152が存在していることでしょう。

 私はこのSWSのTa 152H-1こそが、この世で最も美しく、最も素晴らしいTa 152の模型であると心より信じて最終判断のOKを出しました。

 レシプロ戦闘機が到達した究極の姿 「Ta 152H-1」。

もしかしたら、これはあなたの飛行機コレクションの中で、家宝のような存在になるかもしれませんぞ。

 どうぞご一緒に、そして心ゆくまで。

造形村 代表 重田英行

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商品名 フォッケウルフ Ta 152H-1
発売日 2010年11月27日(土)
価 格 ¥ 9,500(税別)
仕 様 インジェクションプラスチックモデル
※本金型、クリア含む4色成型、要接着剤
パーツ数 182点
サイズ 全長 約338mm、全高 約133mm、全幅 約452mm
備 考 本商品の組立てには接着剤が必要です。

- 完売御礼 -

 


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